バイオリン上達理論

 バイオリンの稽古は、まず正しい弾き方を先生に教わることから始まる。そして、教わった通りに弾いてみて奇麗な音が鳴ったときは体に覚えこませ、汚い音ならば修正するといったことを何度も繰り返す。まさに機械学習バックプロパゲーションである。正しい弾き方(教師データ)に基づいてやった方が、試行錯誤でやるよりも早く上達することは明らかである。 

 はなはだ手前みそではあるが、「バイオリンの数学」で紹介した「擦弦相対性理論(式1)」を、教師データの末席に加えてみてはどうかという提案を行う。なお効果については、評価を行っていないので、あくまでご参考まで。

 改めて、式1は、常に奇麗な音を出すための数式であり、バイオリンの発音メカニズム、すなわち、『持ち手と弓の干渉、弓と弦との干渉および摩擦(含む松脂の影響)、弦振動、駒の固有振動、駒を介した胴の共鳴と弦振動の干渉、胴の表裏板の面振動、および胴の空洞の共鳴』に至る各部の振る舞いを、数理モデル微分方程式)やデジタルフィルタ等でモデル化したプログラムに基づいてシミュレーションした結果から導き出した式である。

  v=(Q/p)×h  ・・・式1

  但し、v:弓圧、h:弓速、p:ピッチ、Q:定数

 それでは、下記①~③に正しい弾き方の事例を挙げる。それぞれにおいて、式1が示唆する「教師データのポイント」を太字で示す。なお変化前の状態は、奇麗な音が出ている状態であるとする。

【ケース①】ピッチが一定で、弓圧を変化させる場合

 式1によれば、pが一定なので、vとhは比例関係となる。したがって、例えばvを2倍にするなら、hも2倍にすれば、奇麗な音が維持できる。

【ケース②】弓圧が一定で、ピッチを変える場合

 式1によれば、vが一定なので、phは比例関係となる。したがって、例えばpを2倍(1オクターブアップ)にするなら、hも2倍にすれば、奇麗な音が維持できる。

【ケース③】弓速が一定で、ピッチを変える場合

 式1によれば、hが一定なので、pvは反比例関係となる。したがって、例えばpを2倍(1オクターブアップ)にするなら、v0.5にすれば、奇麗な音が維持できる。

 組み合わせ的にはあと3通りあるが、実際の演奏では2倍に限定されるものではないので無限通りの状態がありえる。しかし式1を頭にいれておけば、無限通りだろうが対応できる。なお、1は、比例/反比例の概念が出てくるので小学生以下には難しい。その場合は鋸歯状のグラフ(図1)をイメージする方がやりやすかろう。因みに当方はグラフ派だ(笑)。まあ、この理論を使わなくても、小さなバイオリニストが数学にも興味を持つきっかけになるかもしれないので、いろんな面で効果があると信じている。ともあれ、日本から一流の音楽家が数多く輩出され、音楽分野も世界から一目置かれる地位を獲得すること期待している( `ー´)ノ

 

下記サイトにて、複雑系サウンド(チェロ/トランペット)をご試聴いただけます。  https://voibow.wixsite.com/voibow

幼少期に使ったバイオリン

図1(擦弦の挙動) ※別コラム「バイオリンの数学」から抜粋