ずいぶん昔のことだが、自宅から車で1.5時間の山間部に別荘地を買い、そこに掘抜井戸を掘った。今は息子が、その井戸水を生活用水として利用している。近年テレワークの定着に伴い、田舎暮らしをする人が増えているらしい?ので、浅井戸の掘り方の一例を紹介する。
【概要】
水脈がありそうな場所に、土管を置き、その中に入って掘る。自重で土管が埋まるので、その上に次の土管を重ねる。といった反復作業を行えるだけの根性と時間があれば、井戸が掘れる。但し、危険を伴う作業なので、井戸業者/経験者によく相談の上、自己責任で行うこと(参考サイト)。
【準備物】
・土管(全10m分)。当方は直径1m高さ60cm(150kg)ものを購入
・スコップ
・はしご。当方は土管内側に足置きステープルが付属していたので不要
・穴あきバケツ。当方はブリキバケツの底に穴開け
・櫓用の単管パイプ(最低9本)および単管クランプ
・パイプ打ち込み用のハンマー
・チェーンブロック(滑車)
・ロープ
・汚水ポンプ(泥水吸い上げ/排出用)
・水道用塩ビ管
・井戸用ポンプ ※掘る深さで「浅井戸用」「深井戸用」を決定。井戸のスペックをメーカに伝えれば適合機種を教えてくれる。重要ポイントは「吸い上げ高さ」と「押し上げ高さ」である。
【位置決め】適当
【櫓づくり/土管準備】
・掘る場所に4本のパイプを正方形状に配置し、ハンマーで十分打ち込んでおく。その上辺を別のパイプ4本とクランプで固定する。上面の中心部にチェーンブロックが固定できるよう、残りのパイプ1本を渡して固定。そのパイプの中央にロープでチェーンブロックを吊るす。強度に不安があればパイプを増やす。
・土管を購入し、掘る位置近辺にクレーンで運んでもらう。
【掘るstep1】
・チェーンブロックを使って、土管を掘る位置に引き寄せる。
・土管に入り掘り進めると土管が自重で下がる。
・チェーンブロックを使って、次の土管を載せる。
・掘った土はバケツとチェーンブロックを使って外に捨てる。
【掘るstep2】
・水が出始めたら、汚水ポンプを底面に設置し、汲み出す。
・粘土層に到達&深さ8m程度(浅井戸の条件、ポンプ仕様)を目安に掘り進める。
・その深さまでに十分な水量が確保できれば、そこで終了。当方の場合は7m付近で、一日で約1tを貯水できたので、そこで終了した。なお、深さ10mを超える場合は、深井戸用ポンプが必要となる。
・最後に、(泥砂巻き上げ防止のため)底に砂利を敷く。
【水質検査】
・保健所や検査機関で検査してもらう。
・事前に、消毒剤(次亜塩素酸ナトリウムなど)で初期消毒し、何度か使用した後に検査に出すこと。でないと掘る際に混入したばい菌まで検査にかかってしまう。
・飲み水に使えない判定が出た場合は、飲料水のみ市販品にすればよい。
【家への引水ほか】
・浅井戸ポンプを井戸横に設置し、水道用塩ビ管で家の蛇口と連結する。
・井戸側にも塩ビ管を垂らす。底面端側には、異物混入防止用のキャップをつけ、井戸底から10cmぐらいの所にセットする。
・浅井戸ポンプを電源に繋ぎ、誘い水をした上で電源ONすると、蛇口から水が出る。
・井戸に人や物が落ちないよう、必ず蓋をする。でないと、人身事故が起こった場合、責任問題に発展するリスクあり。
・チェーンブロックを外し、櫓の天辺に屋根(波板など)を傾斜状にかける。
【注意事項】
・掘る人は一人で良いが、危険を伴う作業なので見張り役は必須。子供は近づけないこと。因みに、当方は土管を掘る位置に引き寄せる際、土と土管の間に足を挟まれたことがあったが、見張りがいたので事なきを得た。
・土管はマンホール管のように、載置する部分に溝が形成されたものが好ましい。また内側面は塗装されていなものを選択する。当方の場合、掘っている途中で、塗装が水に溶けだしていることに気づき、グラインダーで削り取る作業が発生した。
・井戸から蛇口までの経路中に空気漏れがあると、圧が上がらず水を吸い上げられなくなる。その場合は、浅井戸ポンプに圧不足エラー表示が出る。そうならないよう、塩ビ管は水道用のものを使用/接着剤は新しいもの使用/管の継ぎ手部分に荷重がかからないようにする等の対応が必要となる。
・寒冷地は防寒対策要。例えば地表に出ている塩ビ管を断熱材で巻く。
・それなりに費用がかかるので、使用期間に基づき水道代と天秤にかけるべし。
・災害時や有事を想定して、手押しポンプやツルベも準備しておく。
・降水量が貯水量に影響するので大切に使用すべし。
【感想】
・蛇口から水が勢いよく出たときの感動は半端なかった。
・自分で井戸を掘りたかったので、楽しくやれたし学びが多かった。
・掘抜なので水量が多く、災害時や有事にも(電源なくとも)役に立つ。
水は善く万物を利して争わず
衆人の悪む所におる
故に道に畿し
~水のように生きたい~